■マルチメディアビジネスの
形成を目指して

〜ビジネス化に動き出す日本のEC〜

遊佐 洋(日本電信電話株式会社 総括部長)


エレクトロニック・コマース(以下EC)とは電子商取引(電子通商)と訳されるネットワークで行われるすべての商取引のこと。NTTでECの技術・実用化開発とそれを用いた ビジネスの実現に携わる遊佐洋氏は日本のECの現状と問題点を明快に示し、EC事業をビ ジネスとしての成立させるためのヒントを講義で示した。


日本のEC市場の背景
日本のインターネット人口は97年現在で約500万人、パソコン通信人口は96年末で約500万人だ。消費者向けECはパソコン通信では88年に始まり、インターネットでは95年から96年にかけて、大企業がインターネットユーザーを大きな市場として、ビジネス展開 を考え始めた。その結果、大企業同士が提携するコンソーシアムが多数でき、現在では、30ほどのECプロジェクトが発足している。
EC市場はインターネットユーザーが米国並みに増えなければ、リアルな市場に合致する正常な市場は形成されない。インターネットユーザー拡大の鍵とされていたインターネットTVや32ビットゲーム機の登場が期待はずれの結果に終わった今、OCNがユーザー拡大の一つの糸口になると予想される。
また、正常な市場とは、日常的に物を買う市場でなければならないが、日本においては日常的に財布のひもを握っている家庭の専業主婦が、EC市場形成の鍵であると言えよう。
しかし、コンビニなどの普及率が極めて高く、いつでも簡単に買い物ができる環境にある多忙な日本の主婦が、現在の通信環境でインターネットを利用して日常的な買い物をする状況を作り出すことは難しい。


日本のEC事業
オンラインショップとしては現在、約3000のモールがあるが、通産省が日本通信販売協会に委託、実施した調査によれば、ECによる通販で売れている物はファッション、衣料品、ギフト商品、食料飲料、趣味雑貨など。将来は物流を伴わない、チケットなどの 権利商品やデジタル商品が伸びていくものと予測されている。 オープンモール以外の様々なビジネス事例の中で面白いものでは「miTakaTTa」「MMC I(Multimedia Consumer Industry System)「Benefit Online」などがあるが、いずれも ビジネスとしての成立は難しい状況。
商品をいかに買ってもらえるかは、商品そのものの魅力とシステムの使い易さのほかにプラスαの何かが必要だ。女性をターゲットにするなら、通販のカタログ技術に見られるような、女性が物を買いたくなる環境をネット上で実現することも重要な要素である。


これからのEC事業
インターネットオープン市場でのこれからのEC事業は(1)プッシュ型やパーソナライズのようなサービスを伴う形態、(2)オープン市場の中に共通の目的、関心を持つグループ(=COI/Community of Int erests,Issues,Information)を形成し、グループ内のコミュニティを活性化すること によってビジネスに結びつけていく会員制形態、 (3)企業-企業の取引、企業-消費者の取引というそれぞれ独立する流れを企業-企業- 消費者という一連のECの流れに取り込んでいくサプライチェーンの形態、 ……などのシステムを取り入れていくことによってビジネス化を図っていく方向にある 。



第18期 経営デザインスクール マネジメント研究科 第7回講義

テーマ/NTTがみる新しいマルチメディア社会
〜エレクトロニック・コマースを中心に〜
講師/遊佐 洋(日本電信電話株式会社 総括部長)
妹尾 堅一郎(産能大学 経営情報学部助教授)
参考ホームページ/
「miTakaTTa」
「MMCI」
「Benefit Online」http://www.benefit-online.com/


日時/1997年8月1日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)

academyhills.com