■能ある人には職を、功ある人には禄を
〜全員参加の経営を
   実践する富士製薬工業 〜


美藤 智(富士製薬工業取締役)



経営情報はもとより、人事評価や給与も社員全員に情報開示している富士製薬工業。 今回の講師である美藤 智氏は、大手の損保会社から松下経営塾などを経て、現在は同 社の取締役として「全員参加の経営」という理念に基づいた経営改革を進めている。同 社は従業員250名弱の医療用薬品製造販売会社だが、その大胆かつ新鮮な組織運営、 特にフラット型組織と人事評価システムについての詳細かつ率直な説明は、塾生の強い 関心と多くの質問を引き出した。以下はその講義要約。


フラット型組織の背景には
徹底した情報開示が

我が国の医療行政は医療費削減へ方向転換しており、製薬業界の経営環境は厳しい。 しかし、もともと薬価制度に守られた日本の医療システムが時代に合わなくなっている のであって、企業も行政も国際化に向けた根本的な改革は必要不可欠である。
私たちの企業は、その中でひとりひとりが経営に参加し、それぞれが権限をもって創 造的な仕事ができる組織を目指している。組織体制はメンバーとリーダーと役員の三階 層のみ。肩書や職権ではなく、あくまでも「合意」をモチベーションにした組織運営方 式である。そのために人事評価や給与まで含めた経営情報のディスクローズを進めてき た。また、リーダー会議が議決機関であり、リーダーは交代制。リーダー会議の他に、 全社からメンバーを募って、個々の問題のリサーチやシミュレーションを行うプロジェ クト制を敷いている。ここで十分に検討した結果をリーダー会議に図る。必要に応じて集散するネットワーク型プロジェクト組織は、社員の潜在能力の発掘や「小さな本社」 づくりにもおおいに役立っている。


自己評価システムで自律型人間養成
相互理解の基盤は情報ネットワークで

また、経理事務や物流システムなどはアウトソーシングし、徹底的に本社機能のスリム化や在庫圧縮を図っている。在宅勤務やマンションを利用したサテライトオフィスも 設置して、業務内容に沿った合理的なワークスタイルを実践できるようにしている。 こうした一連の改革が効果的に機能するためには、全社の動きがリアルタイムでわか るネットワーク型情報システムと、社員自身の自己管理能力の育成が不可欠であり、どれが欠けても効果は上がらない。情報システムは数年前にパソコンによるネットワークを構築し、ニフティサーブで結んでいる。
一方、自己管理能力の育成は、毎年、全員が100項目にわたる独自の自己評価シートを基に、自分自身とメンバー相互が評価し合うシステムを導入している。これによって、それぞれが客観的に自分を評価し、自律的に働く訓練ができた。


営業は情報のインターフェース
機敏に反応する組織づくりを

これからは特に環境の変化にどう対応するかが経営にとって重要である。 たとえば医薬品は供給過剰。その中で医師に当社の製品を使ってもらうためには、営業部門をノルマで締めつけるのは逆効果。むしろ営業は医師が必要とする商品・情報を 吸い上げるインターフェースとしての機能を重視し、数値責任はその要望を実現できる研究開発部門や生産部門が負う体制にしたい。環境の変化やユーザーの要望に機敏に反 応できる組織に常に変革していく必要がある。こうした組織改革や情報通信機器など新しいシステムの導入には、不安や抵抗がつきものであり、全員が習得するにも時間がかかるが、それをおそれては未来はない。




第17期経営デザインスクール・マネジメント革新科第5回講義 

テーマ/情報インフラと人事制度による業務改革
       〜21世紀型ビジネスの新しい試み〜
講師/美藤 智(富士製薬工業取締役)

日時/平成9年1月31日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)

academyhills.com