| ■都心居住論 〜自己実現と自己表現の場を 提供する住宅と街を 〜 蓑原 敬(蓑原計画事務所所長) |
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蓑原敬氏は建設省時代から日本の古い街を歩きまわり、「どうして日本の近代住宅団 地には、この空間のヒダや暮らしのニュアンスを造り込めないのだろうと考え続けた」 と語る。茨城県の住宅課長時代、その思いをぶつけるように公営住宅のスタイルを変え る団地を創った。建設省を飛び出してからは、都市プランナーとして活躍、「団地」で はなく、「街」を創ることに専念してきた。「過去50年の残像を払拭して、50年後 に観光資源として世界が評価する都市と住まいを考えなさい。主役は君達なのだ」と塾 生を激励する。以下はその講義要約。 近代主義的都市住宅の限界 1930年に始まる近代主義の超高層住宅は、ベルリンを起点に急速に世界中に広が った。しかし、その非人間性に気づいた欧州の建築家は、1970年代になると193 0年以前の空間スケールで、エコロジカルな都市住宅を建設するようになった。 日本でも同潤会アパートには欧州と共通した人間的なスケールと細やかな造り込みが あったが、その後はマッチ箱型建物が並ぶ団地が主流になり、デザイン的に優れている 最近の団地でさえ、「街」と呼べるものは極めて少ない。 しかし、同じ思いの人々が集まって、幕張ベイタウンに現代ヨーロッパ型のスケール を取り入れた「街」を創った。人々に開放された街、社会システムを包括した複合型の街、時間変化にたえうる街をコンセプトにしている。すでに5000人が暮らしているが、中庭などを使って、居住者が自主的に様々なアクティビティを楽しんでいる。 都市居住者の中身が変わる 過去50年と今後50年では、都市に住む人々の世帯構成や年齢構成、ライフスタイ ルが全く違ってくることに注意してほしい。 東京23区のファミリー世帯と単身者世帯の割合は2015年には完全に逆転し、今 までの「子育てボックス」のような団地は用をなさなくなる。世帯主が60歳以上の割 合も、90年の13%から2015年には33%に急増する。 また、人生80年時代では子育て期はわずか20年余り。子育て後の人生の欲求を満 たす住まいと街が求められている。自己実現の方法も、男は仕事、妻は夫を生き甲斐に するような時代は終わり、それぞれが仕事以外に生き甲斐、楽しみを求めている。そうした新しい価値感を受け止める住まいと街でなくては通用しない。 自己実現と自己表現の場として 都市は多様な自己実現の場を提供するだけでなく、自己表現の舞台でもある。都市に住む魅力のひとつは、時に観客になり、時に役者になって自分を表現できる楽しさがあ ることだ。都市住宅にせよ、街にせよ、そうしたニーズを満たす「しつらい」が必要で ある。 今後は、中庭などの場を共有する居住者が集まっていろいろアクティビティを楽しん だり、共に気持ち良く暮らすための自主ルールをつくったりして、コミュニティーを育 てていくことができる都市住宅を皆で模索しながらつくっていかなければならない。 残念ながら、今の日本の新しい街の中には観光資源となるようなものはない。50年 後に、世界から観光客が集まるような都市ストックをつくり出してほしい。 第18期 環境デザインスクール 第6回講義 テーマ/「都心居住論」 講師/蓑原 敬(蓑原計画事務所所長) 日時/1997年7月16日 会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階) |
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