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■人間の世界観を変えるカオス
その研究と応用の現在 合原 一幸(東京大学大学院 工学系研究科助教授) |
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最近のアカデミックな分野で、トピックスとして取り上げられるカオス理論。一般にも「複数系」という言葉を目にとめることは少なくない。複数系という概念の中で理論的中核をなすのがカオスという現象なのである。世界観さえ変換させると言われるカオス理論を、カオス工学の創始者である東京大学大学院工学系研究科助教授、合原一幸氏にご講義いただいた。
●カオス理論とは? もともとギリシャ語であるカオスは、英語でchaos(ケイオスと発音)といい、辞典には「混沌」と訳されているが科学技術の分野では Deterministic Chaos、つまり、「一見無秩序に見えるが背後に無数の秩序構造を持つもの」という力学現象をあらわす。 例えば、流れの乱れ、リズムを刻む化学反応や神経応答の時間波形である。これらは、非常に複雑に見えるが、背後に決定理論的な法則を持つことがわかってきていた。従来の物の考え方というのは、制御や予測が可能なもの以外は、混沌や無秩序の中にあるという単純な二項対立的なものであった。しかし、理想化された直線的な線形システムだけが世の中に存在するのではなく、現実は非線形であり、しかしこれらも方程式で表わすことができるというのがカオス理論の根幹である。 つまり、その決定論的な構造を理解することによって、予測不可能と思われていた事象についても我々人間が予測・制御できるのではないかということが、人間の世界観を大きく変える現象としてカオスが注目されている所為なのである。 ●実社会への応用 さて、このカオス理論が実社会においてもたらしている影響とはなんだろう?まずは、エアコンの制御。「f分の1ゆらぎ」に基づいたルーバーの動きを生み出したのは、ロレンツの方程式を使ったもの。一般に電子回路でカオスは容易に作り出せる。 まら、運輸省船舶技研が1994年9月にバルト海で沈没したエストニア号についてシミュレーション実験を行う中で、沈没原因とカオスとの関連が明らかになってきている。 カオス理論の「初期値がずれると時間とともにそのずれが急激に成長していくが、ある臨界時間以下の範囲では価の予測は可能である」という考え方を応用して太陽の黒点の変動、ニューヨーク市のはしかの患者数の増減、天気予報の精度の予測などが研究されている。経済分野への応用の研究されているが、その実用性は不明である。 脳、ひいては人工脳の研究分野でもカオス理論は取り入れられている。脳というのは非線形のシステムである。一つの絵を見せても、人によって二通りの解釈ができるという実験(貴婦人と老婆のどちらにも見える絵は有名)からも脳の働きはその非線形性を研究することで大きく進歩すると思われる。 パラダイムの転換は、線形から非線形へ、要素還元論からカオスネットワークを利用した構成論を加えた非線形要素還元論へ、という変化の中で進んでおり、既存の学問の分野を越えた様々な領域で、カオス理論による世界観の転換が起こっている。 情報デザインスクール
●テーマ/「カオス〜複雑系へ挑む」 |
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